人は何かの想いに駆られたとき島に行きたくなるものらしい。実際日本の多くの島が観光地となっている。しかし島に行くには時間も費用もかかる。藤山一郎、森繁久彌、美空ひばり、倍賞千恵子などが活躍した時代に自分の青春時代を重ねる世代にとって、多くはおいそれといける場所ではない。

この世代の人たちが思い立ったら日帰りでぶらりと出かけられ、一人想いにふけるも、あるいは懐かしい友や新たな仲間たちと散策し、語らい、飲食するも自由な、喧騒からは程遠い自然に満ちた島が、首都圏に残されている。
それが神奈川県三浦市、三浦半島最南端の島、城ヶ島である。

城ヶ島は面積1平方キロほどの神奈川県最大の島である。現在は島と三浦半島の間にかけられた全長575メートルの城ヶ島大橋で繋がれている。島へは路線バスで入るもよし、手前の三崎港で降りて橋を歩いて渡るもよし、また三崎港からでている船で渡るのも良いだろう。

島の北側、三浦半島に向いた海岸沿いの低地に集落がある。台地上はかつて島の人々の暮らしも支えた農地となっており、一部は神奈川県立公園として整備されてもいる。また日本で五番目に古いという西洋式灯台(現在は2代目)もある島である。しかし首都圏にありながらも、総じて、しっとりした自然に満ちた島本来の雰囲気が良く残されている。

城ヶ島からも見える江ノ島が観光地然とした動の島であれば、城ヶ島は人の心に何かを植えつける静の島だろうか。冒頭に挙げた著名人たちも唄っている北原白秋作詞「城ヶ島の雨」、そういう喧騒から離れた静かな風情を好む人には魅力的な島である。

それだけでは物足りないと言う人は、島内や対岸の三崎港で三崎マグロなどの海産物を使った少し贅沢な食事をとるのも良い。また城ヶ島への行きかえり、三浦半島の名所に立ち寄りながらの小旅行としゃれ込むのも良いだろう。